ひとりごと、ぶつぶつ

減反補助金、大幅上積み

食料問題は国家の基盤として最も重要な問題であるにもかかわらず、政府は何故これほどまでに、農政を歪め、自給率を低くしてきたのか、国民の多くは疑問を持ちながらも、原因を知らされずにいる。今日の東京新聞によれば、政治のどさくさにまぎれて、またそれに輪をかけるように農家の票を目当てにしたばらまき政策が行われようとしている。減反補助金の大幅上積みである。

戦後の農政について書かれたものがあるので、一部引用する。「本質を見抜く力」養老孟司、竹村公太郎共著 PHP新書の中から神門 善久(ごうどよしひさ)氏の発言

(神門)日本の農業を語る際に、まず問題にするべき数字があります。「農業センサス」のデータによると日本には285万戸の農家があることになっていますが、圧倒的多数は、農業所得にはあまり関心のない兼業ないし高齢農家です。「農家らしい農家」といいますか、農業所得を重視している農家は30万戸強です。

285万戸の農家の他に「土地持ち非農家」といって、非農家でありながら農地を所有している世帯が120万戸あります。土地持ち非農家にもいろいろあります。高齢で農業をやめて、農地を小作に出すか耕作放棄しているケースもあります。最近増えているのは、元農家の子弟で、相続で親の農地を引き継いだケースです。いずれにせよ、土地持ち非農家は、年金なり、雇用賃金なり、農外の収入で生計を立てていますから、農業自体には関心を持っていません。資産として農地を持っているといっていいでしょう。

昔は「専業農家」という用語がよく使われましたが、専業農家の場合は「高齢専業」が多いので、最近は農水省も「主業農家」という概念をよく使います。農家所得の過半が農業で、65歳未満、農業従事60日以上の者がいる農家のことで、42万戸あります。ただ、この中には高齢であったり、農業所得が少なかったりして「農家らしい農家」とは言いがたい農家も相当数含まれています。たとえば、上限年齢を65歳から60歳に5歳引き下げるだけで38万戸に減ります。

また鉢花のように工芸品に近いものを主たる収入にしている農家もあります。ですから、「農家らしい農家」の数は、甘めにみて38万戸。厳しくみると30万戸でしょう。ところが、「農業センサス」では、0,1ヘクタールというごく小面積を基準にして、それ以上の営農をしていれば農家と看做していますから、「農家らしい農家」が農家戸数の圧倒的多数になります。

(養老)農水省は土地で農家を定義しているのですね。(中略)

(神門)実は、いまは耕作放棄地がどれだけあるかについてもわからないのです。違反転用がどれだけあるかについても分かりません。農地関係の重要な台帳は四つあります。一つは農地基本台帳。農業委員会はこれに基づいて活動します。二つ目が農業共済のための共済台帳です。三つ目は減反のための水田台帳です。最後が課税台帳で固定資産税の台帳ですね。実は、この四つが不整合で、しかも、どれ一つとして現況にあっていない。違法脱法で農地が農外転用される場合が散見されますが、ろくに摘発もされず、台帳上の処理も不鮮明です。

耕作放棄が深刻です。農水省は「中山間地帯を中心に耕作放棄が広がっている」といって、中山間地域の問題ににすり替えたがります。しかし、中山間地域の耕作地放棄には山に返すべき農地がずいぶん含まれています。むしろ重大なのは、営農に有利なはずの平場の優良農地で耕作放棄が急増していることです。2005年のセンサスで平場の優良農地でも約6%が耕作放棄されています。2000年のセンサスのときは約3%でしたから、僅か5年間で驚異的な増加です。そして、いいすぎかもしれませんが、耕作放棄地の所有者は、別に生活に困っているわけでもなく、むしろ生活に余裕があるからこそ耕作放棄しています。

(養老)困っていないというのはどういう意味ですか。
(神門)都会に出て行った元農家の子供が、親の農地を相続して、そのまま耕作放棄しているというパターンが最近増えています。農地法はおかしな法律で、たとえば僕や養老先生が農地を買いたいと言ったときには、「あなたには営農意欲があるか」「営農能力があるか」という審査があるのですが、相続の場合は営農意欲や能力がまったくなくてもほぼ自動的に農地を所有できます。

彼らは農業には無関心ですが、農地の所有権には固執します。うまく公共事業などに引っかかれば、地方部でも田んぼ一枚で数千万円とか億単位とかの値段で売れますからね。耕作放棄するぐらいなら貸せばいいと思う人もいるかもしれないけれど、田んぼ一枚でたかだか数万円の小作料のために借り手を捜すのは面倒だし、もしかするとムラの共同作業や共同行事のために労務か資金で協力しろとか言われてヤブヘビになるかもしれない。

それに、いくら法律上は離作保障は不要ということになっていても、日本の土地取引の商習慣は借り手が強いから、うかつに貸し出して売りたいときに売れなくなったら困る。しかも農地は保有コストが低いです。農地税制は大変に複雑ですが、大雑把にいって、一般の宅地よりも相続税評価が安く、税負担も小さい。耕作放棄地の相続税は安く評価してはいけないことになっていますが、これも運用の段階で骨抜きにされ。耕作放棄地でも安い評価が適用されることが多々あります。

つまり、あえて農地を有効利用しなくても、いまの収入で充分に生活できるわけだから、おいしい転売機会が来るまでは、黙って耕作放棄をしていればいいじゃないか。そういう贅沢な算段が働くわけです。困窮ではなく、贅沢ゆえの耕作放棄です。(中略)

さらにおかしなことは、農地法は不在地主の農地貸し出しを禁じています。これもよく誤解されるのですが、農地の権利移動の規則が主として農地法だけだった時代は、実は1975年までのことなのです。75年以降は農地の農地の貸借の圧倒的部分が農地法ではなく農業経営基盤強化促進法に基づいて行われています。さらには、どの法律の手続きもとらないで違法ないし、脱法で行う闇小作も横行しています。農地法に基づいて貸借するのは、かなり限定的なケースでしかありません。

(竹村)耕作放棄は違法ではないのですね。
(神門)耕作放棄を禁じる条項はありません。耕作放棄を解消するための法律や制度は、いくらでもありますから、発動しようと思えば発動できるはずなのですが、まず発動されません。ともかくすべてがうやむやで、面倒なことはすべて先送りです。下手に法律や制度を発動すると、養老先生の話ではないですが、農地」基本台帳と実態が違っていたら、どうするのかという問題までが出てくる。***引用ここまで

このように、戦後の農政は、年金問題と同じように、政治家も役人も、国民全体の食料問題についての将来像を描くことなく、自分たちの保身と票田のことしか考えてこなかったことがよく分かる。今こそ、これらの問題について真剣に考えなければならないのではないだろうか。本来、土地などというものは誰の持ち物でもない。立って半畳、寝て一畳を借りて、私たちは生かしていただいているのである。先祖伝来が聞いて呆れる。この間の戦後の農地改革で、只で所有権を手にしただけではないか。改めて検地を行い、正しい土地台帳を整備して、真剣に農業を営みたい人たちに、無料で貸し出せばいいことなのである。

追記 役人たちは働かずに高給を取る月給泥棒たちだ。

ヤミ専従198人、上司ら945人も処分へ (読売新聞 - 07月15日 14:35)

 農林水産省のヤミ専従問題を調査していた第三者委員会(秋山昭八委員長)は15日、ヤミ専従を行っていた全農林労働組合の幹部が過去5年間に198人にのぼることを明らかにし、石破農相に報告した。

 これを受け同省は、17日にも、退職者を除く職員を減給などの処分とする方針。ヤミ専従行為のあった職員が所属する部署の上司ら945人についても監督責任を問い処分する。石破農相は「国民の皆様におわびします」と陳謝した。

 同省は早急に、ヤミ専従が認定された期間の給与の返還請求額を確定させたいとしている。ヤミ専従が発覚した社会保険庁の場合、昨年、30人分の約8億3000万円の返還を請求したが、これを上回るのは確実だ。

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by 892sun | 2009-07-15 11:27
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