アニメの話でもしようか・・あの頃 4
映画というのは、総合芸術といわれるように、大勢のスタッフが拘わって人海戦術で作り上げます。個人が個性を発揮して自己主張できるのは、せいぜい監督と呼ばれる演出家か、出演した俳優さんぐらいでしょう。アニメでは演出以外は、全員がその他大勢で、歯車の一つにすぎません。それは納得済みのことでしたが、スケジュールのタイトなのには、いつも悲鳴をあげていました。企画が通って、製作が開始され、放映されるまでの準備期間があまりに短いために、ストックが溜まらずに、だいたいいつも、放映と製作が追いかけっこになってしまいます。
放送に穴を開けるわけにはいきませんから、全てがスケジュール優先になり、労働条件とか人権もへったくれもありません。朝、8時に開く現像所に撮影した未現像フィルムを届けるために、いつも徹夜、徹夜の連続です。昼夜交代制にしても、体の調子がおかしくなるのは当然で、そんな生活が何年も続いていたのです。 「田舎っぺ大将」を撮っていたプロダクションに、ときどき、番組ではなく、アニメのコマーシャル作品の撮影を依頼してくるプロダクションがありました。虫プロの出身で独立してロータスというスタジオを持っていた木下蓮三氏でした。ここの製作の林さんと言う人と話が合うようになって、ここが、自主作品「メイドインジャパン」というフィルムを作るなかで、どうしてもスチル写真が必要なので、撮ってくれないかと私に依頼をしてきました。 この作品は、その後、ニューヨークで行われた世界アニメーションフェスティバルに出品され、グランプリを獲得するのですが、私はこの作品ではアニメの撮影はしませんでしたが、スチルアニメの素材を、貸しスタジオを借りてニコンFにモータードライブをつけて、ヌードモデル嬢を撮りました。作品の内容としては、当時の日本が高度成長期を終えて、いろいろなツケが回ってきている中での日本文化を皮肉った内容になっていて、舞台は最初から、最後まで四畳半一間で繰り広げられるのですが、その中を新幹線が走り抜けたり、ヌード嬢が踊ったりしているのを、検閲の役人が墨の筆を持って消そうと追いかけたりするのです。 ここだけ、これほど詳しく覚えているのは、このスタジオロータスとの付き合いが始まって、私は独立し(といっても、もともとフリーランスだったのですから、経理上の会社を設立しただけですが)この時の、モデル嬢と結婚してしまうからです。仕事はコマーシャルとか日本テレビの番組から、特番などでのアニメだけになりました。かみさんはまだ現役でしたが、それまでの履歴を生かして、モデルクラブを立ち上げてマネージメントをやってもらうことにしたのです。後に離婚しましたが、その時設立した会社は、今も乃木坂で立派に営業を続けていますので、検索されたら困るので名前は書きません。当時とは違って、外人タレント専門のプロダクションになっています。 三十代は、ずっとこのプロダクション専門のカメラマンとして仕事をしました。共稼ぎだったので、経済的には楽になりました。多くのコマーシャルを撮りました。名前を出せばご存知のフィルムも多いだろうと思います。日ッテレの番組の中でも、コント55号が売れているころですから、欽ちゃんや二郎さんを使ったアニメや、ゲバゲバ、カリキュラマシーンなどの教育番組など、たくさんありました。 この頃、カナダのオタワで行われたアニメーションフェスティバルに木下夫妻と同行したこともあります。木下氏は久里洋二氏の後のアシファ(世界アニメーション協会)の日本代表でもありました。日本からは他にも手塚治虫氏や古川タク氏、鈴木伸一氏など、アニメ作家が集まっていました。ツアー旅行ではありませんから、ニューヨークやトロントの街を一人であちこち行きました。このとき、初めてビデオカメラを持っていって、記録を残そうとしたのですが、使い方を間違えて、帰りの空港の税関でチェックを受けたとき、何も写っていなくて大ショック、旨く写っていれば、日ッテレで放送するかも、ということになっていたので暫く寝込みました。初期のビデオカメラはテープでアナログですからモニターも付いていなかったのです(泣)。使い慣れないものを外国旅行で使ってはいけません。 書き忘れるとこだった。このカナダ、オタワでは世界の作家の方たちとピクニックに行ったんだけど、スクールバスの相席になったのが、なんとアレキセーエフ夫人だった。アレクサンドル・アレキセーエフといえばアニメおたくには神様でしょう。昔、戦前だけど、主人とニッポンにも行ったことがあるわよ、本も出したことがあるわ、あれはどうなったんだろう、などとおっしゃっていましたね。フランス語ではなくて英語で話かけてくださいましたから、私にも多少理解できたのです。(続く) 秋色に染まる恋人たち 18
by 892sun
| 2007-12-11 11:56
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