再び、ガザより
現在、ガザにはジャーナリストの入国が出来なくなっている。ガザからというニュースは、ガザの外からイスラエルの色眼鏡で見たり、想像したりして送られてくるが、いずれも真実からは程遠いものが多い。今日の日記は、この間まで実際にガザに駐在していた日本人女性からの貴重な情報です。一人でも多くの方々に読んでいただき、今ガザで何が起きているのかを知って欲しいと切に願います。
6年間ガザに住み、今回の攻撃で帰国せざるを得なくなった日本人女性、寺畑由美さんがブログで書かれた英文の和訳を転載します。(ナブルス通信「パレスチナ・ナビ」編集員ビーさんのブログ) ******転載・転送可****** イスラエル軍の地上侵攻が始まる 寺畑由美 2009年1月3日 ただただ信じられない。TVで、闇の中、イスラエルの地上部隊が続々とガザに入っていくのを見つめながら、頭が揺れるのをどうしても抑えられない。大勢の人がひしめきあって暮らしているガザにイスラエル軍が激しい空爆を開始して8日、400人以上が殺され、2000人以上が怪我をし、すでにズタズタになっているインフラが徹底的に破壊された。そして今、イスラエル政府は地上侵攻を開始させた。 空爆が始まって3日目に、私は半ば強制的にガザから退去させられた。それからもずっとガザの友人たちとコンタクトをとりつづけているけれど、話をするたびに心がつぶれそうになる。ひとりひとりの声には、生々しい恐怖とどうしようもない絶望感があふれ、時にはあきらめのようなものさえ感じられる。生まれてこのかた、これほど心配でたまらなかったことはない。これほどまで自分が無力だと感じたことはない。 ガザで起こっていることについて、どうしても書かなければならない。今日まで書けなかったのは、あまりに直接的な感情が沸きかえっていて言葉にならなかったからだ。でも、これからは自分を叱りとばしてでも書いていく。ガザから出ることのできない人たちみんなに、たとえ私の声を届けるだけにしかならないとしても。 IDF Ground Invasion Begins by Yumi Terahata on 03 January 2009 -------------------------------------------------------------------------------- いっさいのルールがなくなった場所 寺畑由美 2009年1月8日 ガザで起こっていることを書けるだけ書いていこう、最初はそう硬く決意していた。その気持ちは今も変わっていないけれど、人道支援物資をガザに運び込む、そのほんの一部を手伝う作業だけで精一杯の毎日が続き、ほかのことはいっさいできないままに来てしまった。 こんなことは言いわけにはならない。私よりはるかに長い時間、ずっとずっとたいへんな作業をしている人たちが大勢いる。寄付を集め、援助物資を送るために、昼夜を分かたず働いている人たちがいる。何千何万ものガザの住人に援助物資を届けるために、自分の命を危険にさらしてガザ内で働いている大勢のガザの人たちと、ひとにぎりの外国人スタッフ・活動家。そして、誰よりも、この13日間、途切れることのない恐怖におびえながら毎日を過ごしている人たち、イスラエル軍の空爆で家を破壊され、傷を負った体と心をなんとかしようと懸命の努力を続けているガザの人たちがいる。 ガザの人たちは、本当に信じられないほどの強さを見せている。子供たちのために、自分の恐怖心は表に出すまいとし、父親と男の子たちは毎日、イスラエル軍の無人機が頭上を哨戒し、空爆と銃撃でひっきりなしに地面が揺れ動く中、一家のための食べ物を探しに街に出ていっている。 今日、電話取材で、こう質問された。「この状況が長く続いたら、ガザの人たちにはどんな影響があると思いますか?」 取材者が何を考えているのか、どんな答えを望んでいるのかはわかっていた。でも、私の頭は真っ白になって、ひとことの言葉も浮かんでこなかった。 私の生涯でいちばん長い2週間。6年の間、私の家と呼んできた場所が、まるで安っぽいアクション映画のように、跡形をとどめないまでに破壊されてしまった。私がこれまで暮らしてきたコミュニティ、私の大好きな人たちには、死んだ人をちゃんと追悼する時間もない。ひたすら、まだ生きている人たちの心配に追われる毎日が続いているからだ。 どこにも安全な場所はない。私がラファに住んでいた時には、攻撃にさらされる地域の家の人たちはみな、国連の学校を避難所にしていた。国連の施設なら絶対に安心だと思っていた。でも、もうそんなことはない。これまで何度も繰り返されてきた侵攻と軍事攻撃の際に、ガザの人たちをそれなりに守ってくれていたルールは、もういっさい通用しない。国連の学校にミサイルが撃ち込まれたことひとつをとっても、それは明らかだ。この学校には何百人もの人が避難していた。ミサイルの一撃で40人以上の人が殺された。 日本のメディアからのなんともやりきれない取材を受けていたころ、1台の救急車と2人の外国人スタッフが乗った2台のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の車が隊列を組んで、殺されたUNRWA現地スタッフの遺体を回収しに向かっていた。この作業はイスラエル軍との事前の調整のもとに進められていた。それにもかかわらず、イスラエル軍は、国連のマークがはっきりと記されている装甲車の1台に銃撃を浴びせてきた。 夜早い時間のミーティングから戻ってきた時に、ガザの人たちに届ける人道支援物資を受け取りにボーダーに向かった国連の車の運転手のひとりが撃ち殺されたということを知らされた。 この心の重さ、このうえない衝撃と信じられないという思いを、いったいどうやって表現できるというのだろう(もう長い間、私自身の心を守るために、シニシズムの鎧をまとうことを学んできた私だったが、今のこの感情はどうにも抑えることができない)。この状況がこんなにも長く続くことが許されるなんて、どうして納得できるというのだろう。 *** 寺畑由美:国連の職員としてガザに駐在。NGO職員として活動していた時期も含めて、ガザでの生活はすでに6年近くになる。今回の事態では、イスラエルによる空爆が始まって3日めに退去を余儀なくされ、現在はガザ外で国連の支援活動に従事している。 Where All Logic Fails by Yumi Terahata on 08 January 2009 寺畑さんのブログ(英語):An Outsider's Inside-View of the Gaza Strip: 翻訳:山田和子
by 892sun
| 2009-01-15 12:27
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