ひとりごと、ぶつぶつ

人生模様

私の入院していた部屋はN5と呼ばれる北側の5階の4ベッドの大部屋です。一晩3万円もする個室のVIPルームもあるそうですが、ここが一番安いので、空き待ちで、退院する人が出ると、すぐに別の人が入ってくる。カーテンで仕切られているだけなので、声は筒抜け。入院してしばらくすると隣人の人となりが分かってきて面白い、というよりは他に楽しみがない。テレビはあっても画像がぼけて見えるので、お金を払ってまで視る気がしない。

先住者は糖尿病の透析患者、身長は私より低いくらいだが、体重は92キロの巨漢。背を丸めて歩く姿はまるで森の熊さんのようであるが、看護婦さんとの言葉のやりとりが軽妙で、看護婦さんたちにも人気がある。糖尿以外にも、病気のデパートのような人で、この病院の常連さんで出たり、入ったりしているらしい。腹膜透析をしていて、24時間透析機を連れて歩いている。この透析機の扱い方を若い看護婦などが患者から教えてもらったりしている。

どうやら焼き鳥屋さんらしいことが分かった。弟も巨漢で、ハンマー投げや砲丸投げで都の大会に出たことがあるらしい。同じく焼き鳥屋を別の場所でやっているらしい。自分も早く治して、また焼き鳥屋をやりたい口ぶりだが、腎臓病が治らない病気であることも知っている。透析まで進んでは、余命は限られている。この人の口癖が、「ダイジョーブ」と「ワリーネ、アリガトウ」。見舞い客のほとんどが夜の蝶と思しき綺麗筋のお姐さんたちだが、日本語が下手だった。看護婦の扱い方が上手いのは納得したが、不思議な生き方をしてきた人物である。人間は悪くないが、業が深そうだ。

対面の隣人は、私より数日後に入った糖尿患者。81歳。本名が芸名にしても通用しそうなりっぱな名前で、何かの職人かと思ったが、老舗の中華料理店の店主だった。こちらも旨いものの食い過ぎから、糖尿、腎臓へと進んで遂に透析。まあ81まで生きたのだから、旨いもの食いすぎたって、悔いはないだろう。哀れを誘ったのは残された老妻で、認知症が出ているので、一人でタクシーに乗って夫の病院へ見舞いのつもりでやってきては、壊れたテープレコーダーの如く、同じことを繰り返し繰り返し話し出す。

何代も続いている老舗なら、住宅も狭くはないだろうに、子供たちは別居しているから、こうした時、困るよね。本当は子供の誰かが同居すればいいのだが、結局はどこぞの施設に入れられることになったようだ。長生きすると、親子ともども不幸だなんて、考えさせられる。

三半規管がおかしいので、手術を受けたいが、血糖値が高すぎるので、とりあえず入院という患者もいた。こいつが酷い自己チュー人間で、驚いた。食事をする時、猫のようにペチャペチャと音をさせて食事をする。60過ぎて、こんな初歩的作法も知らないなんて、どんな人生を送ってきたのだろうか。集団生活をしたことがないのか、良い友人がいないのか。血糖値が高くて入院しているのに、出された食事はペロリ完食するだけでなく、他の人より配膳が少しでも遅れると文句を言う。献立が気に入らないと看護婦やら医者にも噛み付く。糖尿病の初歩知識が分かるDVDを渡したら、イヤホンを付けないで視るので、注意すると切れて、看護婦に噛み付いていた。おかしいのは三半規管だけじゃなさそうだ。

よくよく較べてみれば、私よりも重症の患者ばかりで、こんな人たちと一緒の扱いをされているうちに、本当に寝たきり老人になりそうな気配を感じたので、退院を願い出た。自分の未来の姿を目せられた気がした。私はこんなにはなりたくない。同じゴロゴロでも、家にいれば誰にも気を遣うことなく、動きまわれるが、病院ではベッドを離れること自体に許可がいる。これでは、筋力はさらに衰えるばかりである。家では食事を作るのも自分でしなくてはならない。今は食べたいものを食べたいだけ、食べることで体力の回復を目指している。自転車にも乗ってみたが、乗れそうだ。これで買い物にも行ける。50キロを切っていた体重も増え始めている。

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by 892sun | 2013-09-24 11:12
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この世の仕組み、本当の生き方はもう分かりましたか?地球は次元が変わります。準備は整っていますか?心霊研究家のつぶやきに耳を傾けてください。

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