ひとりごと、ぶつぶつ

第12話 井の中の蛙

或る夏の日、蟻たちがせっせと巣穴に食べ物を運んでいた。そこへ急に夕立があって蟻たちの巣穴の横にも大きな水たまりが出来てしまった。蟻たちは食べ物を運ぶのに水たまりをぐるっと迂回しなくては帰れなくなってしまった。
「あーあ、こんな所に池が出来ちゃったよ。なんて広い池なんだ。これでは今日中に全部食べ物を運べやしない。困ったなあ。」

夕立大好きの蛙が浮かれて飛び出し、蟻たちの話しを聞いてこう言った。
「まあ、君達にとっては大きな池に見えるだろうが、本当の池なんてこんなもんじゃないぜ。僕の住んでる池なんて、この水たまりの何千倍もあるだろうな。どこまでも潜れるし、一回りするのには一日がかりさ。」

木の枝で獲物を探していた蛇が、蛙の言うことを聞いて飛び掛るのも忘れて自慢げにこう言った。
「愚か者が。だからお前たちは俺たちの食料になって当たり前なのさ。本当に広い池のことは湖と言うんだよ。俺が高い木に登って見た湖は、それはそれは広くて向こう岸が霞んで見えないほどだった。いいことを教えてやった代わりに俺の昼飯になってもらおう。」

蛇が蛙に飛び付こうとした瞬間、上空から舞い降りたトビが鋭い爪先で蛇を捕らえると、大きく羽ばたいて岩山にある巣まで運んでいった。食べてしまう前に可哀想だから教えてやるが、とトビは蛇に言った。
「お前の知識がその程度だから私に捕まる。お前の知っている湖から流れた水はどこと繋がっていると思うかね。世界にはもっともっと大きな海というものがあるのだよ。お前の体のようにくねくねと曲がりながら湖の水は海へ流れ込む。海より広い大きなものはない。その果てを見たものは誰もいないだろう。」
トビが自慢げに胸をそらした隙に、蛇はスルリと体をほどき逃げ出した。

やがて西空が朱く染まる中を雁の群れが見事なトライアングルを形作りながら渡っていた。
「我々ほど知識を持った鳥はいないだろう。東西南北も、地域によっての季節の変化も、そして地球が丸いということも知っている。」とリーダーが他の皆に語りかけた。


折りしも麓の町の大学では、アインシュタイン教授が招かれて、学生たちを前に自説である相対性理論の講演をしていた。
「しかるに、今までは光は真空中は真っ直ぐに進むと考えられてきましたが、重力の影響を受けると曲がるのです。宇宙は存在する全重力によって形作られていると考えます。もしも、もしもですよ。どこまでも見える望遠鏡があったと仮定して、宇宙の果てを見てみたら何が見えると思いますか?それは、その望遠鏡を覗いている者の後頭部が見えるのであります。」

今夜の教授の講演は大盛況だった。教授はいつまでも鳴り止まぬ学生達の拍手を思い浮かべながら、満足げに眠りに就こうとしていた。その時、どこからともなく教授に語りかけてくる声がした。
「いと小さき者よ、慢心してはいけない。あなた方の知る物質宇宙など私のほんの一側面にしかすぎない。科学を極めたなどと決して思うな。人間の知り得た知識など、無限の広がりを持つ叡智の泉の水の一滴にも及ばないのだよ」  終
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by 892sun | 2007-11-02 12:24
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この世の仕組み、本当の生き方はもう分かりましたか?地球は次元が変わります。準備は整っていますか?心霊研究家のつぶやきに耳を傾けてください。
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